2024/08/29 13:42



MA STOREは〈Ithe(イザ)〉というファッションレーベルの直営店でもあります。

レーベルは2015年にスタートしてから今年で9年目。

「自分たちが着る普通の服が欲しい」という思いから始めた活動も、これだけ続けばさまざまな方に着ていただき、学生だったお客さまは30代にさしかかり、また若いお客さまとの出会いがあったりと、Itheは数えきれないほどの人のもとや場所へ僕を連れて行ってくれました。

そうして生まれたMA STOREは、ファッションだけではなく家具やインテリア、香り、本にいたるまで、デザイナーや作家、職人などとのものづくりに携わって生きてきた自分の価値観がこうして空間になったもの。

そして、その根本ではやはり、Itheとして持ってきた考え方や手法が品揃えの基本となっています。


Itheはまず洋服の原型となった洋服をリサーチするところから始まり、そのデザインや機能、歴史的な背景を踏まえた上でそれを尊重しながら現代にも通じるシルエットに調整し、生地やパーツを置き換えることで新しい服を作ります。

洋服の原型となった洋服、というとやはりワークウェアやミリタリーウェアが多くみられ、それはこれまでも多くのブランドがサンプリングし、編集し、更新されてきたものだと思います。

そこでItheが新しい視点として手を伸ばし、結果として特別なベストセラーとなったのがこのトラックパンツ。


これはスポーツウェアであるジャージのトラックパンツが原型となっていて、それをスーツなどでも使われるサマーウールとポリエステルの混紡生地に置き換え、サイドに並んでいたロゴを無地にすることでタキシードなどのフォーマルウェアに見られる側章に見立てています。

(上画像)イタリア発祥のスポーツ用品メーカーで1980年代に製造されていたトラックパンツ。



元来の目的としてスポーツウェアが持っている快適な穿き心地と動きやすさに、フォーマルな生地を組み合わせることで上品な印象を加えることで生まれた新しいパンツ。
もちろんフォーマルにもカジュアルにも合わせやすく、生地が擦り切れるまで毎日のように何年も穿いてくださったお客様もいらっしゃるほどの使い勝手の良さがあります。


ベースとなったモデルのタグが縫い付けられていた箇所に、それと同じデザインで中身をブランクにしたものを縫い付けることで、サンプリング元への敬意を表現しています。

全てのものづくりはこうした模倣からはじまるもの。

そして、過去に生まれたものをどういうかたちで現代に受け継ぎ、更新していくのかを探る行為こそ、

今取り組むべきデザインの在り方であると思います。


今回のオープンに合わせて、最初の発売時から使用している生地を使って再生産しています。
こんなちょうどいいパンツを穿いて、そろそろ涼しくなってきた町へと、ぜひお出かけください。