2024/09/17 16:30
香川県の庵治町、牟礼町からのみ採掘される庵治石(あじいし)は、高級石材として知られ、長い期間にわたって現在も町を支えている産業です。
残念ながらまだこの地を訪れたことのない自分にとって、庵治石という存在はこれまで馴染みのなかったもの。そんな中だったからこそ、ご縁があってお取り扱いさせていただくことが決まった際にAJI PROJECTを運営する株式会社蒼島代表の二宮さんとリモートでお話する機会を設けていただいた。
AJI PROJECTは昨年池尻大橋のLicht galleryでイベントを開催されていたことや、プロダクトデザイナーの藤城成貴さんや デザインディレクターのDavid Glaettli(ダヴィッド・グレットリ)さんといった著名な方との取り組みを行なっていることも知っていた。けれど、なぜ香川という土地で「国内外問わずからデザイナーやディレクターを迎えて作品を作る」という先進的な取り組みができたのか、という(思い返すとあまりに失礼な質問だったかもしれませんが)どうしてAJI PROJECTというブランドにこれだけ多くの人物が惹かれているのか、ここに何か大事な、知っておくべきことがあるのかもしれないと、純粋な気持ちで聞いてみたのです。
その質問に対して二宮さんは、幼少の頃から近くの公園に大きなアート作品があったり、イサムノグチの庭園美術館(当時はアトリエ)があったりと、無意識のうちにデザインやアートと触れ合うことが多かったというお話をしてくださり、その背景として戦後の1950年から1974年まで香川県知事を務めた金子正則さんの功績について教えてくれた。
(金子正則さん 引用元:https://discoverjapan-web.com/article/1605)
その仕事ぶりから「デザイン知事」と呼ばれていた金子さんは、戦後復興の時代にいち早くデザインやアートの持つ力を見抜いてそれをまちづくりに活かすための取り組みを行い、丹下健三さんが設計した香川県県庁をはじめ、その頃から世界中からアーティストやデザイナーを招致し、作品やアトリエを作ってもらっていたそう。
香川の土地に根付いていたそんな価値観の延長線上にAJI PROJECTはあったのだと、このお話を聞いてとても腑に落ちたのです。
そうして生まれたAJI PROJECTの理念のもっとも共感しているところは、石材という素材と素直に向き合い、よりシンプルな方法で石に機能を与えようとしているところ。華美な装飾やアイデアをこねくりまわしたようなものではない、最小限の手数で高い加工技術を用いた作品は、石の強さを守りながら繊細な印象にもあります。置いておけばただの石であるものに、機能を与えることでそれは道具になり、暮らしに必要なものになる。人が初めて使った道具は石だったと言われています。そのくらい身近な存在だからこそ、そこには現代にも通づる価値があるはずなのです。
このロックエンドはその象徴的な存在として、ブランドが生まれた時から人気のある作品。石の重さ、丈夫さ、削り出したかたまりの個性を活かしてそれをまっぷたつに割り、接地面を丁寧に磨いてブックエンドに仕上げたもの。いっそブックエンドとして使わなくとも、この自然の、大地にある質量の重みはインテリアとしての役割も果たしてくれる。もちろん、すべての形が一点もので、人の顔と同じように、まったく同じ個体はひとつとしてない。そんな有機的な造形を暮らしに取り入れることは、きっと豊かな気持ちにしてくれることではないでしょうか。
今回入荷している4点ともに、オンラインストアにすでにアップしています。庵治石の存在感、その歴史や携わってきた人々へ想いを馳せながら、これからもひとつひとつの作品を取り扱わせていただきたいと思います。