2025/11/27 19:12
長野県諏訪市に店舗を構える〈ReBuilding Center JAPAN〉は、地域資源の循環を目指して家屋や工場の解体や整理の現場から行き場のなくした古材や古道具をレスキューし、古物として販売をしたり、時にはそれらに手をかけ生まれ変わらせることで次の担い手へ届けることを目的とする地域資源のリユースカンパニーです。
そんな〈ReBuilding Center JAPAN〉が新たにスタートした古材を使用したプロダクトブランド〈notonl)〉のローンチイベントをMA STOREにて開催します。
それに先駆け、〈ReBuilding Center JAPAN〉で広報とレスキューを担当されている百瀬(ももせ)さんに、その活動やブランドをスタートする背景について伺いました。

「〈ReBuilding Center JAPAN〉を紹介する時に最近よく使っているのが”地域資源のリユースカンパニー”という言葉で、地域に埋もれてしまっている使われなくなってしまったものだったり、使い途がなくて困っているものを僕たちが活用できないかとお店で売ったり、プロダクトの材料にさせていただいたりすることで、また使ってもらえる機会を生み出せるような取り組みを事業として行なっています。
古道具屋とか古材屋と言われることも多いのですが、それよりも僕たちが普段使っている”レスキュー”という言葉を使って「レスキュー屋さん」というニュアンスの方がイメージに近いような気がしています。 使われなくなったもの、捨てられてしまうはずだったものたちをレスキューして、そのままだったりアップデートしたりして次の持ち主へと引き継いでいくような活動ですね。

※ポートランドにある〈ReBuilding Center〉
元々はアメリカのポートランドに〈ReBuilding Center〉というお店があって、そこはNPO法人として運営されています。
そこでも地域資源となる不用品を引き取って販売をしていたのですが、それはどちらかと言うと目的は地域の雇用創出や貧困世帯の住環境の確保という側面が強くて。
その点は少し違うのですが、弊社の代表が昔新婚旅行で〈ReBuilding Center〉へ行った時に感銘を受けたそうです。
現地の人が和気あいあいと集まれる場所にもなっていて、そこで環境負荷やゴミを減らしていくこともできるし地域の雇用問題も解決できているのが素晴らしいと。
そうして日本に帰ってきて、名前を使わせて欲しいと連絡してOKをもらえたことから〈ReBuilding Center JAPAN〉が始まりました。
ーNPO法人として運営していたポートランドの〈ReBuilding Center〉に影響を受け、日本で株式会社としてスタートした〈ReBuilding Center JAPAN〉ですが、なぜ本国と同様のNPO法人というスタイルを取らず、株式会社としたのでしょうか。

「僕たちは地域のゴミを減らすというのが一番の目標です。
こういった事業の形でもしっかり〈ReBuilding Center JAPAN〉としてご飯を食べていける、利益を出せるという姿を示していくことで僕たちみたいなお店がどんどん全国に増えていくのではないかと思っています。
そうすると日本全体のレスキュー総量も今より上がって日本からゴミがなくなっていくはず。 そういう未来を目指して株式会社という形態を選んでいます。
また、代表夫婦が建築の内装デザインをできるということもあって、古物や古材をレスキューして販売するだけだと小規模な商売になってしまうところですがではなく、もう一つの柱である内装デザインによって商売としても安定するし、デザインに古材を積極的に用いることで捨てられてしまうはずだったものたちをさらに循環させることもできる、古材を活用した事例を実際に増やしていくことができる、というのも大きいですね。」

ー〈ReBuilding Center JAPAN〉のある上諏訪駅付近には彼らがデザインを手掛けた10にのぼる以上の店舗が軒を連ねています。 魅力的な店が〈ReBuilding Center JAPAN〉をきっかけに増えていき、それによって街自体も活性化していくという、ゴミだけでなく街や社会といった点でも好循環が生まれているような印象を受けました。
個人的にはこういった活動が全国で起こっていけば循環もさらに増えていくとは思うのですが、他店舗展開は考えていないのでしょうか。
「僕たちが店舗を増やすというよりは、僕たちと同じ目標を持って取り組んでくれる仲間を増やしていきたいというところがあります。
それもあってスクール事業(※「リビセンみたいなおみせやるぞスクール」)に力を入れていて、スクールの卒業生たちが今や全国で数十店舗にのぼる数のお店を始めてくれています。
やっぱり、その地域に根ざした活動をしてくれるお店が増えていってほしいという願いがあって、〈ReBuilding Center JAPAN〉が諏訪に向き合った活動をしているように、その地に合った活動の形を模索しながら始めてみるのが一番良いのではないかと思います。」

ー〈ReBuilding Center JAPAN〉の理念として”ReBuild New Culture”という文言が掲載されていましたが、それはどのような文化のことを指しているのでしょうか。
「古物や古材のReBuildはもちろんなんですけど、働き方や暮らし方も、地域も社会もReBuild、作り直していけるという姿勢をもった文化を”ReBuild New Culture”というメッセージにしています。
このメッセージは代表ご夫婦の東野華南子(あずのかなこ)さんの体験が大きなきっかけになっていて、内装業の施工をする時、大きい一部屋を作るために壁を自分たちで壊す必要がありました。
そこで自分の手で初めて壁を壊して中の構造が出てきた時に「家って作り直せるんだ」っていう実感を得たそうです。
そこにあった壁を壊してまた別の場所に壁を作ったり、新たに空間を区切ったり。
その時に感じたある種の”たくましさ”のような気持ちから、こんなに大きなものだって作り直せるなら、きっと社会も国もどんな単位であっても作り直すことができるんだ、という思いが”ReBuild New Culture”につながっています。
あと、コンセプトに近い話をもう少しさせていただくと、僕たちが使う”レスキュー”という言葉も、モノのレスキューだけでなく、人についても同じように考えていて。 家主さんにとって、捨てたいけれど、大切にしてきたもの。 ものを捨てなきゃいけないっていうのはあまり気持ちのいいことではないと思うので、その気持ちもレスキューできるように適切な処分方法を助言してあげることも必要だと思っています。
僕たちとしてはそのものが捨てられてしまわなければ、レスキューをするのは僕たちでなくとも良いと思っていて。
例えば他の古道具屋さんも買取に来ていたら”お先にどうぞ”と先に見てもらって、残ったものを僕たちが引き取るという文化が〈ReBuilding Center JAPAN〉には根付いてますし、フリマアプリでも売れそうで、梱包がそれほど大変なものでなければその方法をおすすめします。
他にも、僕たちで引き取るよりも古美術店など、得意な分野に合ったお店が引き取った方が、それを本当に欲しいと思っている人の手に届く可能性が高くなるものもあると思うので。
僕たちが引き取るべきものを引き取った後も、それをリメイクして制作したプロダクトを 家主さんにプレゼントしたり。
人やものに寄り添ったお引き取りってのをすごく心がけるのが〈ReBuilding Center JAPAN〉のレスキューの特徴です。
ーそういった経緯でレスキューされてきた古物や古材を〈ReBuilding Center JAPAN〉が循環させていく中で、この度〈notonly〉というプロジェクトが生まれました。
後編では〈notonly〉が生まれた経緯や〈ReBuilding Center JAPAN〉が目指す未来についてお話を伺います。
