2025/11/29 20:23

長野県諏訪市に店舗を構える〈ReBuilding Center JAPAN〉は、地域資源の循環を目指して家屋や工場の解体や整理の現場から行き場のなくした古材や古道具をレスキューし、古物として販売をしたり、時にはそれらに手をかけ生まれ変わらせることで次の担い手へ届けることを目的とする地域資源のリユースカンパニーです。

そんな〈ReBuilding Center JAPAN〉が新たにスタートした、古材の楽しみ方を新たに提案するプロダクトブランド〈notonly〉のローンチイベントをMA STOREにて開催します。

それに先駆け〈ReBuilding Center JAPAN〉で広報とレスキューを担当されている百瀬(ももせ)さんに、〈notonly〉が生まれた経緯や〈ReBuilding Center JAPAN〉が目指す未来についてお話を伺いました。


「〈notonly〉というブランドが生まれた経緯ですが、これまで僕たちは古材の経年変化による表情を生かした一点もののプロダクトを作ってきたんですね。 その活動を続けていく中で、古材を求めてくださるお客様にも変化があって。 古材の表情が好きだという方だけでなく、環境に対するひとつのアクションとして古材を選ばれる方が増えてきたんです。 入社してくるスタッフも以前は古いものが好きというスタッフが多かったのですが、環境保護へ対する活動としてのリビセンに共感して入ってくれる人も増えてきた。 僕自身もそういった面でのリビセンへの共感が入社の動機にもなっています。

そんな経緯もあって少しずつ古材の持つやれた表情だけでなく、その奥に眠る木目の綺麗な表情の材を求めていただくことも増えてきて。それなら綺麗な材を使ったプロダクトもあった方がお互いに気持ち良く関係性を続けられるのではないかと至ったのですが、今作っている古材の一点ものとは方向性が違ってくることもあって、新たなブランドとして作ることになりました。

〈notonly〉での制作を通して僕たちとしても大きな発見があって。 
古材には古材ならではの表情だけでなく、それを削った後の綺麗な木目にも魅力があるんです。
木目は樹種が変われば表情は全く変わる。古材のものづくりのおもしろさは樹種が限定されないこと。
やれた表情だけじゃない、古材がもつ木目のきれいな表情の魅力、樹種ごとの特徴の魅力、そしてレスキューされてきたという古材が持つストーリーの魅力、幾重にも広がる古材の魅力を感じてもらえる。
そこでノットオンリーな楽しみ方があるんだという意味を込めて〈notonly〉という名前になりました。


ーはじめのプロダクトとしてスツール、トレイ、フレームの3種類を制作されましたが、なぜその3種類とされたのでしょうか。

実はリビセンとしてちゃんとした家具をデザイン・制作したことが今までなくノウハウもなかったので、まずは既存の家具を模倣する社内プロジェクトからスタートしました。
実際に図面を起こして作ってみるとさまざまな気づきがあり、デザイン的なメリット、構造的なメリット、形状の意味など知ることができてとても勉強になりました。
いろいろリサーチして作る中で、「こんなスツールがあったらいいのにな」という思いと、古材の材料的な制約と面白さ、個性とかうまくデザイン性を内包したプロダクトとしてスタッキングスツールが出来上がっていきました。いくつも試作をして、ミリ単位で微調整して、無垢材特有の歪みや動きにも真摯に向き合ってつくっています。
デザイン・制作するリビセンも古材のもつ新しい価値を楽しんでつくっている。それが〈notonly〉のデザインだと思います。

トレイは代表夫妻の華南子さんがお家で使うためのトレイを探した時に、シンプルで使い勝手の良い無垢の木のトレイが思いのほかなくて、困っていました。
トレイくらいのサイズでも、古材としてピックアップできるのはそこまで多くありません。
それでもトレイってどんな家にも受け入れやすい。
古材を生活の中で使ってみて、そのストーリーや環境問題にたまに思いを馳せる。
何かのお祝いにストーリーと共にプレゼントする。そういう暮らしへの取り入れやすさがトレイの魅力だと思います。

そしてフレームが実は最初に生まれたのがプロダクトなんですけど、僕たちのオリジナルプロダクトの中でも古材を使ったフレームは一番人気があることもあって、今まで一点もので作ってきたフレームを綺麗な材でまず作ってみようとなりました。 
オリジナルプロダクトでは型板ガラスとクリアガラスを組み合わせて使っていたんですが、〈notonly〉では両面ともレスキューした透明ガラスにしています。
デザインも生活に取り入れやすく、飾る絵を邪魔しないようなシンプルなデザインにしつつもちょっと愛嬌と可愛らしさがあるデザインになっています。
内側が斜めにカットされているのも絵に影が落ちないようにするデザイン的な工夫です。
今まで1000種類以上のいろんな形の古材フレームをつくってきた経験から生まれたシンプルなフレームなんです。


ー〈notonly〉について、百瀬さんの思う魅力を教えていただけますか。

「〈notonly〉全体を通して言える魅力はやっぱりレスキューした材を使っているので、中量生産できるプロダクトでありながら一点もののような楽しみ方ができるところです。 僕たちは金物のパーツしか新しいものは使っていないので、スツールやフレームでレスキュー材は90%(以上)、トレイについては100%古材から作られています。

専用のパッケージにはメモリータグがそれぞれ付けられていて、引き取ってきた場所の情景が浮かぶような3つのワードがそれぞれ記されています。リビセンは空き家からレスキューしてきた古材や古道具をレスキューナンバーで管理しているので、4万点以上ある在庫のほとんどがどこからレスキューされてきたのかを遡ることができます。 それによって、同じものであるのに見た目や材が違うことももちろん、材にまつわるストーリーもお伝えできるので、それは〈notonly〉の特徴になっていると思います。

プロダクトごとにもお話させていただくと、スツールがメモリータグと紐づいているのは基本的に座面の材で、脚は別のメモリータグを持つ材を使っている場合があります。 また、構造上の理由もあって座面と脚を連結する材は硬さのあるものを使っているので、スタッキングした時に異なる木材がコラージュされているような見た目が魅力にもなっているのではないかと。

トレイは接着をせずに一枚板から切り出しているのでつなぎ目もなく、無垢材ならではの魅力を楽しんでいただけるプロダクトです。 生活に溶け込むような主張のないデザインで、価格帯もいわゆる作家作品よりも少しお求めやすいものになっていると思うので、長く使っていただけるものになっているのではないでしょうか。

フレームについては先ほどと重複してしまいますが、ガラスの部分もレスキューしてきた材なので、元々窓ガラスとして使われていたり、ガラス屋さんで保管されていたものが使われているのが大きな特徴だと思います。 光や背景が透けることで他のフレームとは違った楽しみ方ができます。 壁にかけても良いですし、天井から吊るして使ってもらうのも楽しいプロダクトです。


ー今後の〈notonly〉はどのような展開を予定されていますか。 

「〈notonly〉としては今後もプロダクトを増やしていきたいと考えていまして、生活に溶け込みやすい価格帯のものから、少し高価格帯のものまでチャレンジは続けていきたいと考えています。 また、古材を使用するのでどうしても通常の木材を使用するのと違って材料の制約が大きいです。そんな古材ならではの制約を楽しみながら制作し、もっと多くの古材をレスキューできるようつくり続けていきたいと思っています。

”レスキューストーリー”というのが唯一無二に僕たちが持っている強みだと思うので、そこを活かして多くの方に手に取ってもらえることで確実に資源の循環につながっていきます。

ただ、無理に押し広げていくのではなく、そういったストーリーに共感してくれる人を一人でも増やしていきたいですし、僕たちの活動を知ってくださっている方は多くいらっしゃると思うので、すこし違う入り口、これまでリビセンと交わらなかった方達にも今後は届けていくことができればと思います。

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